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社会行動の中でも、社会のメンバー同士を結びつけ、共存関係を築くための行動
(Numan, 1974; Terkel et al, 1979; Kalinichev et al., 2000), (Cala-mandrei and Keverne, 1994; Numan and Numan, 1994; Li et al., 1999)
MPOAの中でも、養育行動の中には中心部cMPOAがもっとも重要です。cMPOAを破壊すると、交尾や出産は阻害されず、子育てが特異的にできなくなります。
一方、養育中にもっと活性化するのはオキシトシンニューロンを含む前交連核ACNの非オキシトシンニューロンでした。
ほ乳類の特徴であるほ乳には、オキシトシンとプロラクチンというホルモンが必須です。これらの分子のノックアウトマウスは授乳できませんが、養育行動はあまり障害されません。ほ乳の進化以前に、母子関係は進化しており、これにはホルモンは必須ではないと考えられます。
子育ては「母性本能」?
食事や性行動などと同様、子育てが上手にできるためには、経験・学習による神経回路の発達が必要です。
◆ 人生早期の社会関係から得た経験 ◆ 子育てしている人を見て学ぶ経験 ◆ その場で実際に子どもと接する経験
とくにヒトを含む霊長類では、3種類の経験がどれも非常に大切です。そのうち「実際に接する」経験学習にはERK-Fosシグナル伝達が関係しています。
この「父性の目覚め」現象はライオンやサルにもありますが、メカニズムは不明でした。そこでオスの子育てと子をいじめる行動に係る脳部位を探したところ、ACN,MPOA(特にcMPOA)とBST(特にBSTrh)が見つかりました。
BSTrhを阻害すると若いオスの子殺しが減少し、cMPOAを阻害すると父親は子育てできなくなります。
cMPOAを光遺伝学や薬理遺伝学で人工的に活性化しても、若いオスの子殺しは減少しました。cMPOAとBSTrhは拮抗的に作用して、子育てと子殺しのどちらを選択するかが決まると考えられました。
さらにBSTrhとcMPOAの活性から、そのオスが子を養育したか攻撃したのかを当てることもできるのです。
養育放棄(ネグレスト)や子ども虐待は、実は他の哺乳動物にもあります。私たちは、動物から得た知見を人間の親子おの支援につなげる実証研究も行っています。
© 2008 Kuroda Research Team, RIKEN CBS